のび太の恐竜

 

 

 ■夢をたのしもう

 “アニメーション”という言葉には“生命を宿らせる”という意味が含まれているのだそうです。これは古代の“アニミズム”という考え方から来たもので…。いやむつかしい話は止しましょう。とにかく、ここに「アニメドラえもん」が完成したのです。ぼくらが紙に描いたドラえもんに、文字どおり新しい生命が吹きこまれたのです。

 原作には、ぼくらの少年時代からのユメを、いっぱい盛り込みました。はるかな中生代の世界に旅し、本物の恐竜を見ること。見るだけじゃなく、さわったら、友達になって背中に乗せてもらったら……。

 そのユメが、この「のび太の恐竜」では、大スクリーン一杯にくりひろげられるのです。ピー助のかわいらしさ。圧倒的な量感で迫るティラノザウルス。プロントザウルスやプテラノドンが、色あざやかな原始世界を背景にいきいきと動くのです。ぼくらは原作者であることも忘れ、楽しいユメの一ときを過ごしました。皆さんにも楽しんで貰えればと、願っています。

『ドラえもん のび太の恐竜』劇場用パンフレットより1980年3月発行  

 

 ■映画「ドラえもん」によせて……

 子供の頃からアニメーションが好きで、中学の時、二人で「親指姫」のアニメを作ろうとしたこともあるくらいです。手塚先生の「鉄腕アトム」がテレビアニメになった時、すごく感激し、その後、スタジオ・ゼロというアニメ製作会社を仲間といっしょに作った時期もあります。そんなわけで、私たちの作品がアニメーション映画になることは、長い間の夢だったといえます。映画「ドラえもん」は私たちの作品のはじめての劇場用映画であり、また、初めてのドラえもんの大長編ということで、大いに楽しみにしています。

コロコロコミックデラックス3『映画アニメドラえもん』1980年4月発行  

 

 ■作者のことば

 「のび太の恐竜」は、大長編ドラえもんの第一作であり、アニメ映画にもなった作品です。

 この中でドラえもんたち5人は、時をこえて白亜紀の恐竜時代へ旅をします。そして、子ども恐竜「ピー助」のために、力を合わせて数かずの危険に立ち向かいます。

 愛と友情がいっぱいの大冒険物語を、みなさんもじゅうぶん楽しんでください!

てんとう虫コミックス『大長編ドラえもんVOL.1 のび太の恐竜』1983年12月発行  

 

 ■藤子先生のことば

 「野生のエルザ」という本を、知っていますか。映画化もされたので、見た人も多いと思います。まだ乳ばなれしていないライオンの孤児“エルザ”を、一人前に育てあげ、ふたたび大自然の中へ帰してあげる、というお話です。

 ぼくは、これを読んで、たいへん感動しました。そして、この感動を、なんとかドラえもんの世界に再現できないものかと思いました。「のび太の恐竜」25ページは、こうして生まれた短編だったのです。(てんとう虫コミックス第10巻に収録)

 それから何年かたって、ドラえもんはTVアニメとなり、さらに劇場公開用の長編映画を作ろうということになりました。しかし、あいにくそんな長い原作の用意はありません。そこで、短編の「のび太の恐竜」に後日談をつけ加え、一本のストーリーにまとめることになりました。

 まず、シナリオを書いてシンエイ動画にわたし、一方ではコロコロコミックに雑誌連載するという、同時進行体制で作業が進められたのです。昭和五十四年の夏でした。

 同時進行とはいっても、雑誌まんがとアニメでは、いろいろな点でちがいがあります。雑誌のほうは、ぎりぎり発売日の二週間ほど前まで締め切りを待ってもらえます。ところが、アニメは、大勢の人たちの集団作業なので、人物・背景の設定や絵コンテなど、最初に決定しておかねばなりません。どうしても、アニメのほうが雑誌よりも先行してしまうことになります。そんなこんなで、悪役の密猟者グループが、軍隊みたいな巨大組織になってしまったのは、予定外でした。今になって振り返ってみると、「ここは、もっとふくらましかった」とか、「こんなエピソードも入れたかった」とか、心残りはありますが、なんといっても記念すべき第一回長編アニメです。シリーズの中で最も愛着の深い作品といえば、この「のび太の恐竜」をあげることになるでしょう。

   一九八九年一月十一日

てんとう虫コミックスアニメ版『映画ドラえもん のび太の恐竜下』1989年2月発行  

 

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