21エモン

 

 

 ■作者のことば

時は21世紀。450年のノレンを誇る“つづれ屋旅館”は倒産寸前であった。ここに決然と立った21代目21エモン!!つづれ屋中興の祖たらんとはりきるのですがそれにしてはちょっぴり根性がたらん。〔第1巻〕

「昔むかし…」ではじまるのがおとぎばなしです。遠い昔のできごとを空想でつづった物語です。この本は未来を空想したおとぎばなしです。ですから、はじまりのことばは「いまにいまに…」〔第2巻〕

これはわたしが初めてかいた(昭和42年)SFギャグまんがです。読み返して見て不満は多いのですが、好きな作品の一つです。姉妹作に“モジャ公”があります。併読くださればうれしく思います。〔第3巻〕

昭和46年 虫プロ商事刊 『21エモン』1〜3巻より  

 

 ■宇宙へいらっしゃい

 これは21世紀後半の世界が舞台になっています。今から百年近い未来だと思ってください。そのころには人間がどんどん宇宙へのりだして行ってるし、宇宙からも色んな宇宙人達が地球へやってきています。そんな時代のトーキョーの小さなホテルの一人むすこが“21エモン”です。21エモンとその友達モンガー、ゴンスケは両親の反対をおし切って宇宙へとび出すのですが、思いがけない大冒険にまきこまれることになるのです。くわしくは映画をどうぞ。

昭和56年 『映画21エモン 宇宙へいらっしゃい!』パンフレットより  

 

 ■キャラクターづくりの秘密

 ボクたちが、この作品でかこうとしたのは、未来を舞台にした生活ギャグです。アンドロメダから冥王星を経由して、宇宙の旅行者が大挙して地球にやって来るという、100年後の東京──。

 主人公一家は、そこで宿屋を営んでいるのですが、江戸時代に開業した古い伝統を誇るものの、設備が古めかしくなって経営難が続いています。古いタイプのロボット従業員を含め、一家は異星からの客を泊めて盛り返そうとするのですが、地球人と各星人の考え方や行動様式がズレて、おかしなことが起こります。いうならば、未来という異常世界に、現代の日常を持ちこんで仕立てたギャグといえます。

 主人公・21エモンくんは勉強ぎらいで、立体テレビで送られてくる授業も、ビデオ・テープにとりまくって、あとでヒーヒー苦労する少年です。ときには、宇宙パイロットを夢見るが、難しい勉強が必要とわかってひるんだり、身を危険にさらさなければいけないことでおじけづいたり……ライバルの娘に、ホテル経営のやりがいを吹きこまれたりすると、たちまち乗り換えたりする現代っ子ふうの性格の持ち主。周囲は、そのたびに一喜一憂させられます。ことに、当代の主人・20エモンは、ひとり息子がパイロットだと知るや、ヤケ酒をあおって悩んだり、心変わりをしたと聞いてはとび上がって喜んだりする。そこには、宿屋の経営もさることながら、祖先から子孫への後継ぎといった、今と変わらない考え方が浮かび上がります。ボクたちは、未来社会を描きながらも、現代と基本的に変わらない人間の生活を、作品に投影したのです。落ちこぼれやいじめっ子、今あるがままに、というわけです。

 さて、ドラマの展開される舞台は、100年後の宿屋ですが、建物のつくり方や設備の設定は、基本的には、現代の旅館のそれを発展させたものです。宿泊者は広大な宇宙の旅行者たちですので、それらと支障なく接触できるように、いろいろな手だてを考えるのです。そのうちにもっともらしい未来ができあがります。

 舞台設定にしろ、人物の性格づけにしろ、日常的なものの裏打ちが薄いと、ただのトッピなフィクションに陥りかねません。21エモンたちの宿屋は、一家の願いにもかかわらず、見すぼらしさのために周辺の景観とは違って、きわ立って見えてきました。こうなると、主人を始め21エモン、従業員ロボットたちの客ひきに、悲壮なムードがからんで、笑いをひき立ててくれます。

 この宿屋に泊まる宇宙人は、地球の価値観で測りきれないような、おかしな生物です。ヘッコロダニ星雲のタンバ星系ササヤマ星人は、水銀のスープを飲み、ニッケルの重油いため、銅板のステーキを食べる怪物でした。この星には、お金を使う制度がないので、宿泊料を自分のペットで肩代わりして帰ります。このペットこそ、モンガーという“絶対生物”で、これに話題をふくらませる役目を負わせ、それ以後のゲストキャラとからめて、各話を展開していったのです。

昭和58年 小学館刊ビッグコロタン1『藤子まんがヒーロー全員集合』より  

 

 ■藤子・F・不二雄先生からのメッセージです

 “つづれ屋”は江戸時代から何百年もつづいている伝統ある宿屋、つまりホテルです。21エモンは、そこの大事なあととり息子なのに、本人の将来のユメが宇宙パイロットになること。困った立場です。そんなある日、21エモンは、ふとしたはずみで家出をし、ふとしたはずみで“アステロイドラリー”に出場することになりました。宇宙一危険といわれるロケットレースです。そしてレースの結果は、アッと驚く意外な展開に…。

平成4年 「映画21エモン 宇宙いけ!裸足のプリンセス」パンフレットより  

 

 ■あとがき

 「21エモンは、昭和42年(1967年)、週刊少年サンデーに連載されました。21世紀まで、あと33年。ずっと先です。未来です。つまり、かなり無責任に空想のつばさを広げ書きたい放題書いたとしても、その未来予測の当否がはっきりするころには、とっくに連載も終わり、「21エモン」というマンガのあったことさえ誰もおぼえていないだろうと…。

 ま、そんなわけで、安心して書きたい放題書いたわけです。ところが、幸か不幸か、これが単行本となり細々ながら刊行され続け、テレビアニメ化され劇場映画まで作られ、ついにアニメブックとして世に出ることとなりました。これは…かなりヤバイことでありますよ。

 だって、そうでしょう。今年はすでに1992年。あとわずか8年で21世紀ではないですか!!すでに現実の21世紀の姿が、おぼろに見え始めています。マンガの21エモンと現実の間に、すでに小さなくいちがいが現れ始めているのです。たとえば…。

 マンガの21エモンが、月へ観光旅行に出かけるエピソードがあります。当然、彼は人類が最初に月着陸第一歩を印した記念の地も訪れています。ぼくはその場所を“虹の入江”としました。ところがそれから間もなく、アポロ11号がほんとに月へ降りちゃった。しかも!ぼくのマンガを無視して“静かの海”南東部へ着陸したのです。しかたなく単行本では、地面を省いてトボケルことにしました。

 いちおう21世紀半ばの出来事としてあります。なんとかその頃までに恒星間ロケットが開発され、異星人との交流が始まるよう、祈るしかありません。

 さて、前置きが長くなりましたが、アニメ「21エモン 宇宙いけ!裸足のプリンセス」は若いアニメーター諸兄の力で、古めかしい原作をガラリ!イメージチェンジしています。後半の銀河ラリーのスピード感がすごい。映画を見なかった人は、ぜひテレビやビデオで見てくださいね。

   一九九二年九月十四日

1992年刊 てんとう虫コミックス・アニメ版「映画21エモン 宇宙いけ!裸足のプリンセス」より  

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