T・Pぼん

 

 

 ■「T・Pぼん」で書きたかったこと

 僕は史劇映画が大好きです。いわゆる歴史劇ですが、必ずしも史上有名な人物や事件がでてこなくてもその時代の空気や匂いが感じられれば満足なのです。逆にどんなに豪華なセットや衣装でも、そこに生活感がないと気に入りません。BC何千年のエジプト人がカラフルな絹織物(らしき布地)なんか着ていると、それだけで白けてしまうのです。

 日常の行動やものの見方考え方など、現代の規範では理解できない部分が多かった筈。そんな部分もひっくるめて、可能な限り過去の忠実な再現を見たい。つまり、タイムマシンで本物の過去の世界を目の当りに観たいというのが、僕の究極の夢なのです。

 僕は大変な方向音痴です。以前一人でヨーロッパを旅したときは、地図を見ながら、道標を確認しながら歩いて、それでも何時も迷子になっていました。そこで改めて感じ入るわけです。三蔵法師やマルコポーロは偉いなあと。ろくな道しるべや地図もない時代に、よく無事にインドやモンゴルにたどり着けたもんだと。いや、考えれば考えるほどこれは凄いことですよ。

 道中未知の国を幾つも幾つも通り過ぎていくわけです。ガイドブックなしで。それぞれ言語も風俗も習慣も違います。宿泊施設とかシステムとかどうなっているのか、チップは? 両替は? 食事は? 古代の旅行者にだって偏食はあったはず。口に合う食べ物が見つからなければ餓死する恐れもあるわけで……。

 幸い僕は20世紀の旅行者です。迷いながらも目的の遺跡には、すべてたどり着くことができました。そして、例えば暮れなずむ パラチーノの丘にたたずみ、この小さな丘の上の都市国家から発展し、世界中にまで版図を広げたローマの人々に、思いを馳せたのです。

 そんなこんな過ぎた時代への思い入れを漫画にしたくて「T・Pぼん」を書きました。力不足で遠く意図に及びませんでしたが、実はまだ連載を終えてはいないのです。

  一九九五年五月

1995年刊 中央公論社 中公文庫コミック版「T・Pぼん」第3巻より  

 

 ■インタビュー

──藤子・F・不二雄先生、この原作は、ずいぶん温めてこられたものとうかがいましたが?
 「原作は、ちょっと前に描かれたものなんです。ぼくは、どちらかというと生活ギャグまんがが専門なんですが、歴史ものも大好きなんです。ぼくが一番欲しいものは、タイムマシンですね。タイムマシンで行って、立ち会ってみたいという過去の事件は、それこそ無数にあります。そんな夢を、自分なりに、雑誌の上に描いてみたのがこの作品です。それが今回テレビアニメ化されたのですから、大変喜んでいます」

──主人公の名前が、並平凡。これ「並」で「平凡」ってことですね。これはどうしてなのですか?
 「主人公はT・Pの隊員になるわけですが、それはすごく頭がいいからとか、すごく体が丈夫だからとか、そういうことじゃなくて、ごく普通の人なんですね誰でも隊員になれる。それはぼくであるかもしれないし、君であるかもしれない……。誰でも、隊員になれば、こういう素晴しい体験ができるということです。だから、平凡な子どもという意味で主人公の名前を『並平凡』にしました」

──どんな内容なのか、ストーリーを簡単に説明していただけますか?
 「一種の救助隊っていいますかね。過去、未来を問わず、行ったり来たりして、不幸な死に方をした人などを助けるわけですね。ただし、あまりむやみに人助けばかりしていると、歴史がメチャクチャになってしまいますから、歴史が変わらない範囲内で助けていかなければならないわけです。そういった救助活動を通して、いろいろな時代の、いろいろな大事件などを、ちょっと横から見てみようといった感じなんですね」

──それでは、最後にファンのみなさまへ、一言お願いします。
 「今までにアニメ化されたいくつかの作品と違って、これはとても異色──風変わりです。ちょっと『あれ?』と思うはずです。だから、ご覧になって、けして損になることはないと思いますから、ぜひ見ていただきたいと思います。」

   1989年9月8日、東京テレビセンターにて

1989年刊 小学館 てんとう虫コミックス・アニメ版「T・Pぼん 下」より  

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