エスパー魔美

 

 

 ■キャラクターづくりの秘密

 「エスパー魔美」は昭和52年“マンガくん”(後の少年ビッグコミック)に連載した作品です。「オバケのQ太郎」昭和40年以来パーマン・21エモン・ウメ星殿下・ドラえもん・キテレツ大百科と続いてきた一連の生活ギャグ路線が曲り角に来ていた時期でもあり、このへんでちょっと目先を変えてみたいなと考えました。
 ○主人公を女の子にする。
 ○超能力を持たせる。ただし、ごくささやかな力に限定する。
 ○活躍の場を大人の世界にするそのため主人公の年令を中学生に引き上げる。
 ○主人公の性格、生活環境を、なるべく平凡なものとする。
 今でこそ珍しくもない少女エスパーですか、当時の少年誌ではあまり例がなく、それだけに抵抗を感じた読者も少なくなかったようです。
 さて、そのエスパーの活躍する舞台ですが、これを子どもの生活圏に限ってしまうと話が広がらない。いじめっ子とのトラブル、テスト、宿題、遅刻、お小づかい、ガールフレンドなど、似たような話ばかりになりがちです。かといって秘境や宇宙、過去や未来での大冒険となれば空想の比重が大きくなりすぎ、身近なエスパーという狙いから外れたものになってしまう。あとは現実的な大人の世界へ割りこんで行くしかありません。
 “超能力”は、今の合理主義の世界では、まだまだみとめられているとはいえません。まじめに研究している人もいますが、単なる空想と考えている人の方がおそらく多いでしょう。ぼくとしては、なるべく現実感のある作品にしたいわけです。となれば、物語りの始まりは“信じない人”の視点から書きおこさねばなりません。主人公と彼女を取りまく環境を、平凡なありふれたものに設定したのもそのためです。
 ごく、ふつうの女子中学生。顔も頭脳も十人並み。ちょっと親切の度が過ぎて押しつけがましくなるのが欠点だが、世の中に背を向けてる人を、知らん顔で見すてることなど絶対にできない。時には人間の心の暗闇にたじろぐこともある。手にあまる難題をかかえて、ベソをかくこともある。それでも、なお…。という主人公の気持ちを共感してもらえれば大成功というわけです。
 だから、彼女の超能力も並外れたパワーにまでエスカレートしては困るのです。決してドラえもんのポケットみたいに万能ではなく、読者の誰もが「ひょっとしたら自分にも。」と思えるていどの超能力に止めるべきです。
 平凡な一人の女の子が、ある日突然自分の異常な力に目ざめる、驚き、喜び、迷い。少しずつその力を身につけ、使いこなしながらエスパーとして成長して行く。なるべくウソっぽくならないように…と念じながら第一回のペンを取りました。

小学館刊ビッグコロタン1『藤子まんがヒーロー全員集合』再版より  

 

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