ジャングル黒べえ

 

 

 ■キャラクターづくの秘密

 ボクたちの作品が、テレビ・アニメ化される場合、だいたい、雑誌の連載が先行しています。ところが、「ジャングル黒べえ」だけは、テレビ・アニメとしての企画が先になり、放映開始と同時期に雑誌連載が始まった、ただ一つの例外的作品といえます。
 アニメの制作は、時間のかかるものですから、雑誌連載と同時に放映を開始するには、制作のスタートを雑誌より数か月以上も前にしなければなりません。そこでボクたちは、アニメ製作会社の依頼で、連載の始まる前にシノプシス(あら筋)を何本かつくりました。
 すでに、キャラクターはつくられ、ジャングルの野生児・黒べえが東京にやってくるという設定も決まっていたので、それにそった話はわりとスンナリできます。ところが、キャラクターがボクたち自身でつくったものでないので、味をひき出せなくて苦労したことを思い出します。
 雑誌の連載は、小学館の低学年向け学習誌で始まりました。テレビ・アニメと並行してかいてったのですが、人気を集めるというまでは、いかなかったようです。しかし、テレビ・アニメの「ジャングル黒べえ」は、有力な裏番組を向こうに回して、なかなかの健闘を見ていたそうで、ボクたちの心境は複雑なものでした。
 前にもふれたように、この作品のテーマは、文化・自然環境をまったく異にして成長した人間がおりなす、カルチャー・ショックをギャグ化しようとした、アニメ先行企画の一つです。アフリカのジャングルで育った野生児が、東京のまん中で大騒動を起こしたら、おかしなドラマができるだろうと、立案者がプランを出すのは自然です。
 アニメ制作会社の企画者が、これらの設定内でシノプシス執筆の依頼をするのもわかります。そこで、ボクたちはこの注文に、1黒べえはアフリカ・ピリミー国の大しゅう長の息子。2文明社会見たさに飛行機につかまって東京上空まできたところ、寒さと空腹のために、佐藤しし男という、勉強ぎらいで泣き虫の子どもの家の庭に墜落する。3しし男が薬や食べものを与えたことで、恩に報いようと決心する。4黒べえは魔法の力を、しし男のために役立てようとするが、その結果……どんなことになるか、というふうにギャグ化していったのです。
 「ジャングル黒べえ」のギャグは、ピリミーという、いかにもアフリカらしい文化が側面で効果を上げています。黒べえが、しし男に助けられた恩を穴で表し、恩返しできたときは豆粒大の小石で表現する。穴が小石でうずめられるまで、居候を続けるという黒べえ。
 あるいは、ベッカンコと呼ぶ神像と雨降り伝説。二本足で空も飛ぶ、黒べえのペット・パオパオは、アフリカ象の形をしている。しし男のパパの将棋の敵は、すなわち黒べえの敵、戦うべしと、ウーラの奇声をあげながら戦いの踊りを踊る黒べえは、アフリカの権化だ。この作品では、最初のキャラクターづくりをやらなかったので、こんな話で自画自賛するばかりです。

昭和58年 小学館刊ビッグコロタン1『藤子まんがヒーロー全員集合』より  

 

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