のび太の創世日記

 

 

 ■藤子・F・不二雄先生からみなさんへ

 “アニメーション”という言葉には“生命を宿らせる”という意味が含まれているのだそうです。これは古代の“アニミズム”という考え方から来たもので…。いやむつかしい話は止しましょう。とにかく、ここに「アニメドラえもん」が完成したのです。ぼくらが紙に描いたドラえもんに、文字どおり新しい生命が吹きこまれたのです。
 原作には、ぼくらの少年時代からのユメを、いっぱい盛り込みました。はるかな中生代の世界に旅し、本物の恐竜を見ること。見るだけじゃなく、さわったら、友達になって背中に乗せてもらったら……。
 そのユメが、この「のび太の恐竜」では、大スクリーン一杯にくりひろげられるのです。ピー助のかわいらしさ。圧倒的な量感で迫るティラノザウルス。プロントザウルスやプテラノドンが、色あざやかな原始世界を背景にいきいきと動くのです。ぼくらは原作者であることも忘れ、楽しいユメの一ときを過ごしました。皆さんにも楽しんで貰えればと、願っています。

『ドラえもん のび太の創世日記』劇場用パンフレットより1995年3月発行  

 

 ■作者のことば

 今回のお話では、のび太たちが神さまになって、新しい地球を創ることに挑戦します。
 のび太たちの創った新地球では、地上の人類とは別に、こん虫から進化して、より高度な文明を持つ地底人類が栄えています。この地底人たちが、地上世界をとりもどすために立ち上がろうとしているのです。さて、地上人類の運命はどうなるのでしょうか?

てんとう虫コミックス『大長編ドラえもんVOL.15 のび太の創世日記』1995年9月発行  

 

 ■藤子先生のことば

 宇宙とか地球とか、すっごく大きなものを、のび太のくせに気軽に作っちゃおう。ふだんバカにされてばっかりののび太を、小さな世界の中だけででも神様の立場に置いてみよう、というのが今回の映画原作のテーマです。実は短編では何度か書いていますが、今度は長編。いろいろなアイディアでたっぷりふくらませ、創世テーマ決定版にという意気ごみでした。あんなこともしてみたい、こんなことも…。構想は限り無くふくれあがります。しかしこれが大変な誤算でした。
 一口に「創世」といっても、このテーマを分解してみれば、地球の歴史、生物の進化史、人間の歴史をまとめたものであり、じっくり書き込めば書いても書いても書き切れないビッグテーマだったのです。190ページ足らずのコミックス、100分のアニメに盛り込むにはかなり無理がありました。例によって気楽にスタートし、書き進むうちに三回目あたりで漠然と不安を感じ始め、四回目ではっきり心配になり、五回目であせりました。『果たしてこの調子でストーリーは完結するのだろうか?原作者の運命やいかに!』ハラハラドキドキの六回目。舞台は地底世界にまで広がり、もう最終回だというのに虫人間たちは地上奪還を宣言し、地上人は受けて立つと言う。神様はのび太のほかに三人も増えちゃって、これがヤジ馬気分で見物するばかり。そんなこんなをどうまとめればいいのか、それこそ神に祈りたい思いでした。
 締切りを一日延ばして待ってもらっていたある朝、寝起きのふやけた頭にモヤーッと浮かんできた一つのキャラクター「エモドラン」。虫人間社会の未来ロボット。地底版ドラえもんです。彼を登場させることで、どうにか話を終わらせることができました。あぶなかったなあ…。
 こんなわけで始めに考えたさまざまなエピソードのうち、半分以上が積み残されてしまいました。もっとたくさんの時代や、外国との交流など描きたかった。しずちゃんの女神様ももっと見せたかったし、エモドランやビタノにも活躍させたかった。この苦い経験を忘れずに、次の大長編こそカンペキな構想の元に自信あふれる第一歩を……とは行かないよね。きっと。

   1995年6月29日

てんとう虫コミックスアニメ版『映画ドラえもん のび太の創世日記』1995年8月発行  

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