のび太と鉄人兵団

 

 

 ■原作者の藤子不二雄先生から

 テレビでおなじみのドラえもんが、春になると劇場の大スクリーンにあらわれ大冒険をします。それも今度で七回目。みなさんが熱心に応援してくださったおかげです。
 さて、ドラえもん七回目の大冒険は「のび太と鉄人兵団」。ある日、空から変てこな機械が降ってきました。のび太が組み立ててみると、なんと家より大きな巨大ロボットが完成したというのが話の始まりです。おかしくてこわくて楽しいSF長篇です。

 [以下、「プロゴルファー猿」「オバケのQ太郎」解説のため省略]

『ドラえもん のび太と鉄人兵団』劇場用パンフレットより1986年3月発行  

 

 ■作者のことば

 アニメ映画原作、大長編ドラえもんシリーズも七作め。わたしたちのライフワークともいうべき「ドラえもん」の、新たなる冒険がスタートします。
 人間をどれいにするために地球に攻め入る鉄人兵団を相手に、力をあわせて戦うのび太と仲間たち。そんな戦いの中での、子供たちの勇気と友情を、心をこめて描きました。

てんとう虫コミックス『大長編ドラえもんVOL.7 のび太と鉄人兵団』1987年2月発行  

 

 ■藤子先生のことば

 「ドラえもん」のシリーズには、ひとつの大原則があります。それは、ドラえもんのポケットからどんなすごいひみつ道具が出て、どんなすごい事件が起きても、身の回りの世界にはほとんど影響を残さないということです。なるべくママや近所の人々にも気づかれず、1話10ページほどの範囲のうちで解決しなければなりません。
 この原則は、映画原作の長編ドラえもんにもあてはまります。だから、これまでの話で使われた舞台は、はるかな大昔、はるかな宇宙、人間の近づけない秘境、深海底、魔界などでした。のび太のご近所に迷惑をかけたような大騒動は、ひとつもありません。
 なぜ、こんなきゅうくつな原則を決めたかといえば、「ドラえもん世界」の“日常性”をだいじにしたかったからです。読者のみなさんの身近にありそうな、そんなありふれた世界にドラえもんのトッピな道具を登場させたいからです。異常な世界、何でもありの世界では、ドラえもんが何を出そうとふしぎではなくなってしまいます。だから、ひとつの話の中できちんと事件をかたづけて、つぎの話のためのありふれた舞台を残しておくわけです。
 しかし……、しかしです。長編ドラえもんも話を重ねていくうちに、たまにはのび太の町そのものを背景にした台紙源を描いてみたいなと思ったのです。恐るべき強敵が襲ってきて、東京を荒らしまわるような。東京どころか日本中を、できれば世界中が破壊されつくすような、そんな大事件を。しかも、のび太のご近所に迷惑をかけないで……。
 そこで、“鏡の中の世界”を作ることにしたのです。左右こそあべこべだけど、現実の世界とそっくりな世界。しかも、人がひとりも住んでいない…。これなら、安心して高層ビル街をぶっこわせます。自由の女神でもロンドン橋でも、気がねなく焼きはらえるわけです。こうして、ドラえもん映画史上最強の“鉄人兵団”を迎える準備が、すっかりととのったわけです。
 まんがを描き終えて、最初のねらいははたせたようです。まあ、一応満足しています。ただひとつ残念だったのは、解決にタイムマシンを使ったこと。ちょっとイージーでした。でも、ほかに思いつかなかったのです……。
 ぼく、頭ワルいね。

  一九九一年七月五日

てんとう虫コミックスアニメ版『映画ドラえもん のび太と鉄人兵団』1991年10月発行  

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