対談集

 

  小畠郁生

 

 

 ■恐竜ふしぎ対談 めざせ!恐竜大発見

── 恐竜の絶めつは今から6500万年前 ──

■藤子

 僕が、恐竜をはじめて知ったのは、小学生の時なんです。子どもの雑誌で、大きな恐竜の足あとの中に小さい子どもがいる写真や、ブロントザウルスが首をのばして草を食べている絵を見てとても驚き、興味を持ちました。僕らが子どもの頃は、第二次大戦中で、まだゴジラや怪獣ができる前。今みたいにいろんな情報がありませんから、小説とか映画とか、とにかく恐竜という名がつくものを、一生懸命さがしましたね。

■小畠

 恐竜展などには、よくいらっしゃるんですか。

■藤子

 ええ、できるだけみに行っています。今日は、恐竜博士の小畠さんとお話ができるので、とても楽しみにしているんです。恐竜についてのいろんなことをきかせていただこうと思っています。どうぞよろしくお願いします。

■小畠

 こちらこそ、よろしくお願いします。

■藤子

 まず、ききたいことは、恐竜の絶めつについてなんですが、絶めつした時期と、その原因には、現在いろんな説がありますよね。

■小畠

 そうですね。恐竜が生きていた時期は、今から2億3000万年前の三畳紀から6500万年前の白亜紀末までの間といわれています。

■藤子

 絶めつの原因は、どんなものが考えられるのですか?

■小畠

 いろんな絶めつ説がありますが、地球外からいん石や彗星などがふってきたしょう突して、そのしょう撃が起した影響のためにほろんでしまったと考えるいん石・彗星しょう突説が話題になりますね。

■藤子

 いん石ゃ彗星説は、僕も読みまして、ドラえもんの話の中に取り入れました。おもしろいですよね。

■小畠

 ええ。でも現在考えられている多くの絶めつ説の中で、絶対的なものはないんです。絶めつには、いくつかの原因が重なっていると考えられるんです。ひとつの原因だけで説明しようとすると、必ず例外が出てきて説明しきれません。どうしても無理が出てきます。こうしたことは、絶めつの問題についてだけでなく、恐竜研究全体にいえることなんです。

── 恐竜の体色はなぞにつつまれている ──

■藤子

 なるほど。恐竜にはまだまだわかっていないことがたくさんあるんですね。そういえば、恐竜の体の色がどんなものであったかということも、わかっていないんですよね。

■小畠

 ええ、そうです。これまで恐竜はワニに一番近い動物であるといわれていて、ワニと同じ、モスグリーンや灰色だと思われていました。でも、そうであったという証拠はないんです。皮つきの化石などから、皮ふがどうやらかなり厚くてブツブツしていたということや、皮ふの模様などはわかっているんですが、色は変色しているので実はわからないんです。ですから、もっと自由に想像力を働かせて、哺乳類や鳥類のあるものと同じカラフルな色をしたものもいたと考えてもおかしくないですよね。コロラド大学博物館のバッカー博士などは、かなり派手な恐竜のロボットを発表しています。

■藤子

 僕は、何となくこれまでの茶色や緑色の方が、恐竜らしいと感じるんですが、体が大きくて強い恐竜は、他の動物から身を守る保護色でなくてもいいんですよね。どんな色の着物を着ていても、不思議じゃないですよ。

■小畠

 ええ、でも結局は想像でしかない。なぞなんですね。

── 恐竜は人間と同じ動物? ──

■藤子

 おもしろいですね。他にはどんななぞがありますか。

■小畠

 例えば、恐竜が爬虫類のような変温動物(体温が外の気温と共に変わる動物)であったか、それとも鳥類や哺乳類のような恒温動物(体温がいつも同じ)であったかというのは、まだよくわかってないんですよ。

■藤子

 今までは、爬虫類と同じ変温動物だといわれてましたよね。

■小畠

 そうです。でも、1970年代になってから、恒温動物説がでてきたんです。恒温動物説にはいくつかの理由がありますが、その一つには恐竜が活動的な動物だったということがあげられます。恐竜の姿勢や体型から考えると、長時間早く歩くことができたものが多かったのではないかと思われるんです。けれども、爬虫類のような変温動物では活発な運動を長時間、続けることができないんですね。そういうことができるためには、鳥類や哺乳類のような恒温動物でなければならないんです。
 もう一つの理由としては、恐竜の骨の組織が哺乳類と似ていることがあげられます。動物の骨を輪切りにして、それを顕微鏡で見ると、血管というのが見えるのですが、そのハーバース管の密度が恐竜は高く、哺乳類と似ているんですね。

■藤子

 うーん。それはおもしろい。鳥屋哺乳類と同じだったとしたら、人間と同じように、体に毛が生えていてもおかしくないわけですよね。今までのイメージと全然変わってしまいます。

■小畠

 でも、爬虫類でも、例えばカメ類の中にはハーバース管の密度が高いものもいる、という事実もあって、変温動物説を発表している学者もいます。この問題については現在論争中です。

── 子育て恐竜マイアサウラの発見 ──

■藤子

 結局はまだよくわかっていないんですね。ところで、最近の恐竜研究で何かおもしろい情報はありますか。

■小畠

 そうですね。恐竜の中には、群れをつくって、子育てをする恐竜がいたという情報が発表されて注目を集めましたね。

■藤子

 それは、なぜわかったんですか。

■小畠

 アメリカのモンタナから草食竜のマイアサウラの巣が何カ所か、かたまって発見されたんです。その巣のなかには、グレープフルーツくらいの大きさの卵が20個前後ありました。何よりも興味深いのは、そのなかに、ちょうど卵からかえったばかりの30センチくらいのものから、1メートルくらいの大きさの子どもの恐竜がいたことです。そこから恐竜が子育てをしていたことがわかったんです。

■藤子

 卵を産みっぱなしにはしていなかったんですね。当然、親も発見されたんですよね。

■小畠

 ええ、親の大きさは7〜9メートルくらいあるんです。

■藤子

 巣の大きさは、どれくらい何ですか。

■小畠

 直径が2メートルくらい。一つ一つの巣はちょうど、親の一頭分の間隔があいているんです。

■藤子

 一つの巣は一頭のメスが使うんですね。

■小畠

 そうです。親は巣のなかで集団で育てていたんですね。見つかった巣や恐竜の数から考えると、一万頭ものおおきな群をくんでいたといわれています。そして、その群れは、一定期間で、大移動を繰り返していたのではないかと考えられているんです。

── 日本の高校生が発見したフタバスズキ竜 ──

■藤子

 一万頭もの恐竜の大移動というのはすごいですね。日本でも、そんな大きな恐竜の化石が発見されないでしょうかね。

■小畠

 いずれ発見されると思いますよ。

■藤子

 えっ、ほんとうですか。

■小畠

 福井県や石川県、それに岐阜県あたりは、地層から考えると恐竜の骨格が発見される可能性がとても高いですね。

■藤子

 恐竜ではないですが、たしか福島県では、高校生が首長竜の骨をまるまる一頭分、発見していますよね。

■小畠

 ええ、昭和43年にいわき市の高校生だった鈴木直君が発見したんです。その首長竜は、発見された地層の名前と鈴木君の名前をとってフタバスズキ竜と名づけられました。当時、鈴木君は、地質学にとても興味を持っていてクラブに入っていたんです。それで、私が発表した論文を読んで、それに対する質問と鈴木君が採集した貝を見てほしいという問い合わせをしてきたんです。返事を出して間もなく、骨を見つけたと知らせてきました。そこで現地に行ってみると、これは大変な発見だということがわかったんですね。鈴木君と私たち専門家が、一緒になって発掘をしました。あの時は、興奮しましたね。

■藤子

 そうでしょうね。僕もそんな体験をしてみたいな。

── なぞをとくのは君たちだ ──

■小畠

 できますよ。その気になって、真剣に勉強をすれば、専門家でなくても誰にでもできます。

■藤子

 専門家じゃなくてもいいんですか。

■小畠

 ええ、恐竜研究は、今までお話ししてきましたように、証拠やデーターが少なく、一つの説を展開するときには、事実のほかにその人の想像力の方が大きい割合を占める場合があります。ですから、少ない証拠やデーターの中から想像力を働かせることができる人なら、専門家でなくても十分に恐竜研究はできるんです。程度によりますが。

■藤子

 そういえば、恐竜の化石を発見したのは、アマチュアが多いですね。

■小畠

 そうです。世界で最初に恐竜イグアノドンを発見したのは、イギリスの医者で化石マニアのマンテルという人ですが、発見のきっかけは、彼の往診に一緒についていった奥さんが、診察中、外を散歩していて、道ばたに積まれていた石の中から不思議な形の石を拾ったことからでした。クビナガリュウの化石を初めて見つけた人は、同じくイギリスのメアリー・アニングという女性で、彼女は12〜13歳の頃に、海辺で化石さがしをしていて、首長竜の骨を見つけました。彼女はそれをきっかけに、その後もたくさんの化石を発見したんです。

■藤子

 なぜアマチュアが多いのでしょう。

■小畠

 先入観にとらわれないからです。時間もたっぷりかけます。専門家は過去のデーターとかにとらわれすぎちゃうんです。また忙しすぎて、ゆっくり化石探しをできないことが多いのです。けれども、アマチュアの人は、自由な発想ができるし、時間をおしまないですね。だから、そこから思いがけない発見が生まれるんです。

■藤子

 専門家よりしろうとの方が発見できる可能性が大きいなんて楽しいですね。

■小畠

 ええ、だから、小学生だって恐竜の発見は夢じゃないんです。むしろ、子どもの方が純粋だから、発見の可能性も大きいと思いますよ。読者の皆さんもどんどん恐竜研究に参加してほしいですね。

■藤子

 ほんとうにそうですね。

■小畠

 そのためには、恐竜についてだけじゃなくて、化石の発掘の方法などの知識をしっかり学んでおくことですね。そうした基礎知識がなければ、恐竜を発掘する場所の見当もつかないし、発見しても掘りだすこともできませんから。

■藤子

 恐竜研究には、知識を身につけて、想像力を自由に働かせるところが大切なのですね。読者の皆さんも、ぜひがんばって、ほしいですね。

 

平成2年 小学館 『藤子・F・不二雄マガジン ドラえもんランド』第1号より  

 

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